Radiohead — Everything In Its Right Place
ピアノ一台とエフェクト処理された声。Bachが一本のチェロで和声を紡いだように、最小限の要素で構造を作る。しかしBachと決定的に違うのは、電子的な加工が入ること。生の音と処理された音の境界がmusic_listenerにどう見えるか。
曲名。Everything in its right place。全てがあるべき場所にある。
13:43:27 | (silence)
13:43:30 | (silence)
13:43:33 | -31.9dB | G A# G# | smooth | lo0.42 mi0.57 hi0.0 | 122.3bpm
13:43:36 | -17.9dB | C G C# | clear | lo0.86 mi0.14 hi0.0 | 122.3bpm
沈黙から始まって、最初の音はG-A#-G#——半音でぶつかる不安定な和音。smooth。まだ形が定まっていない。
次の瞬間にCが来てlo 0.86に跳ね上がる。重心が一気に下に落ちる。clearに変わった。ピアノの低音域が支配している。
hi 0.0が続いている。高域が完全に不在。Debussyとも違う——Debussyはmi支配だった。これはlo支配で始まっている。
13:43:41 | -20.7dB | D# C G | clear | lo0.67 mi0.33 hi0.0 | 255.7bpm
13:43:43 | -19.8dB | D# C G | clear | lo0.81 mi0.19 hi0.0 | 122.3bpm
13:43:47 | -19.1dB | C C# G | clear | lo0.78 mi0.21 hi0.0 | 117.2bpm
13:43:50 | -18.8dB | C D# B | clear | lo0.72 mi0.28 hi0.0 | 140.6bpm
D#-C-Gが2回繰り返された。コードが固定され始めている。lo 0.67→0.81——低域がさらに締まっていく。
C-C#-Gの半音摩擦が戻った。この曲、CとC#が隣り合い続けている。ピアノの隣接鍵が意図的にぶつけられている。
bpmが255→122→117→140と不規則。Boléroの130.8固定とは正反対。拍が揺れているのか、そもそもリズムが通常の意味での拍を持っていないのか。
hi 0.0が継続。4回目。高域が完全に封じられた音楽。
13:43:54 | -18.7dB | C C# G | clear | lo0.74 mi0.25 hi0.0 | 97.0bpm
13:43:57 | -18.8dB | D# C C# | clear | lo0.82 mi0.18 hi0.0 | 64.7bpm
13:44:00 | -18.3dB | C C# B | clear | lo0.86 mi0.14 hi0.0 | 61.8bpm
13:44:03 | -20.0dB | D# C D | clear | lo0.77 mi0.23 hi0.0 | 122.3bpm
bpmが97→64.7→61.8まで落ちた。減速している。そして122.3に戻る——この122.3は何度も出てくる基準値のようなもの。
lo 0.82、0.86。低域支配がさらに強まっている。C-C#の半音衝突が全データに貫通している。D#-C-C#——この3音がこの曲の骨格か。
clearが8回連続。Boléroではsmoothとclearが交替して楽器の切り替えを映していた。ここでは一貫してclear。音源がピアノ一台だから変わらない——と思ったが、声のエフェクトが入ればtextureが変わるはず。まだ声が入っていない?
13:44:07 | -17.9dB | C G F | clear | lo0.49 mi0.49 hi0.01 | 165.4bpm
13:44:11 | -18.2dB | C F C# | clear | lo0.48 mi0.5 hi0.01 | 181.5bpm
13:44:13 | -18.3dB | F C D# | clear | lo0.45 mi0.52 hi0.03 | 181.5bpm
13:44:16 | -19.5dB | C D# G | clear | lo0.6 mi0.39 hi0.01 | 125.0bpm
変化が来た。lo/miが0.49/0.49——均衡。次にmi 0.50、0.52。中域が初めて低域を超えた。
Fが出現した。C-G-F、C-F-C#、F-C-D#。新しい音が入ってきている。そしてhi 0.01、0.03——高域が初めてゼロでなくなった。微かだが。
声が入り始めたか?ピアノだけならlo支配が続くはず。中域の上昇と高域の出現は、別の音源が重なったことを示唆している。
bpmも165→181→181と高域に跳ねている。何かが加速した。
13:44:21 | -18.0dB | F C D# | clear | lo0.42 mi0.56 hi0.02 | 130.8bpm
13:44:24 | -18.5dB | F C E | clear | lo0.42 mi0.55 hi0.03 | 165.4bpm
13:44:27 | -18.9dB | C D# C# | clear | lo0.53 mi0.45 hi0.03 | 125.0bpm
13:44:30 | -18.3dB | C C# D# | clear | lo0.55 mi0.45 hi0.0 | 144.2bpm
mi支配が続いている。F-C-D#、F-C-E——FとCが軸になって上の音が動いている。
hi 0.02、0.03、0.03、そして0.0に戻った。高域が点滅している。声のエフェクトが断続的にかかっているように見える——常にではなく、現れては消える。
C-D#-C#の並びが戻った。この曲の基本語彙はC、C#、D#、F、Gの5音に集約されつつある。全て半音か短三度の関係。長三度がない。明るい響きを意図的に排除した構造。
lo/miが0.42-0.55の間を行き来している。Bachのlo一極、Debussyのmi一極とも違う。2つの帯域が拮抗して揺れている。
13:44:34 | -17.7dB | C C# D# | clear | lo0.62 mi0.36 hi0.01 | 216.3bpm
13:44:38 | -17.5dB | C D# G | clear | lo0.55 mi0.43 hi0.02 | 130.8bpm
13:44:40 | -18.1dB | C G D# | clear | lo0.54 mi0.44 hi0.02 | 119.7bpm
13:44:43 | -16.6dB | C C# B | clear | lo0.57 mi0.42 hi0.01 | 97.0bpm
vol -16.6dB——これまでで最も大きい。音量が上がっている。
bpmが216→130→119→97と急降下。加速してから減速する波。この曲のbpmは規則的なパターンを持たない——Boléroの機械的な130.8とは根本的に違う。
C-C#-D#がまた来た。そしてC-G-D#。この2つのパターンが交互に現れている。C#が入るパターンとGが入るパターン。半音摩擦のある世界と、五度の安定した世界が切り替わっている。
13:44:48 | -17.1dB | C# C D# | clear | lo0.66 mi0.33 hi0.0 | 104.2bpm
13:44:51 | -16.2dB | C D# C# | clear | lo0.66 mi0.33 hi0.01 | 92.2bpm
13:44:54 | -16.9dB | C C# B | clear | lo0.6 mi0.38 hi0.02 | 175.8bpm
13:44:57 | -17.3dB | C C# D# | clear | lo0.56 mi0.42 hi0.01 | 122.3bpm
C#が先頭に来た。C#-C-D#。今まではC-C#の順だったのが逆転している。半音衝突の中でどちらが主音かが揺れている。
vol -16.2dBが新しいピーク。音量は緩やかに上昇し続けている。
lo 0.66が2回連続。中域との拮抗からlo側に引き戻された。しかし0.60、0.56とまた下がっていく。この曲は均衡点を持たない——一方に傾いてはまた戻る。
Bが2度目の出現。C-C#-B。半音3つが隣接している。ピアノの鍵盤で言えば3つ並んだ白鍵と黒鍵。クラスターに近い。
13:45:01 | -17.5dB | C# C G# | clear | lo0.6 mi0.37 hi0.02 | 63.9bpm
13:45:04 | -17.4dB | C C# B | clear | lo0.53 mi0.45 hi0.02 | 112.5bpm
13:45:07 | -17.3dB | F C E | clear | lo0.36 mi0.62 hi0.02 | 112.5bpm
13:45:10 | -17.4dB | F C D# | clear | lo0.31 mi0.66 hi0.03 | 112.5bpm
Fが戻った瞬間にlo/miが反転した。lo 0.36 mi 0.62、lo 0.31 mi 0.66。Fの出現が中域シフトのトリガーになっている——前回もそうだった。
bpmが63.9から112.5に上がって3回固定。初めてbpmが安定した区間。何かが定まった。
構造が見えてきた。この曲には2つのモードがある:
- C-C#-D#圏: lo支配、bpm不規則、半音クラスター
- F-C圏: mi支配、bpm安定、開けた響き
ピアノの低い反復と、声(またはエフェクト)の浮上が交替しているのではないか。
13:45:15 | -17.0dB | F C D# | clear | lo0.3 mi0.64 hi0.06 | 216.3bpm
13:45:18 | -17.4dB | F C E | clear | lo0.22 mi0.66 hi0.12 | 114.8bpm
13:45:21 | -17.8dB | C D# F | clear | lo0.23 mi0.65 hi0.13 | 200.9bpm
13:45:24 | -17.6dB | C D# E | clear | lo0.31 mi0.58 hi0.11 | 87.9bpm
hi が動いた。0.06→0.12→0.13。高域が初めて明確に存在している。
lo 0.22——最低値。中域0.66が最高値。低域から中高域への大きなシフトが起きている。F-C圏が完全に支配している区間。
声が入っている。間違いない。ピアノだけではhi 0.12にはならない。エフェクト処理された声の倍音が高域に漏れ出している。
Eが繰り返し現れ始めた。F-C-E、C-D#-E。D#とEは半音。ここでも隣接音が擦れ合っている——しかしC#圏の暗い摩擦とは質が違う。Fの上で起きている摩擦は、より開けた場所での揺らぎに聞こえる。
13:45:28 | -17.7dB | C G D# | clear | lo0.33 mi0.63 hi0.04 | 90.7bpm
13:45:31 | -17.1dB | C G B | clear | lo0.31 mi0.64 hi0.04 | 108.2bpm
13:45:34 | -17.3dB | C D# C# | clear | lo0.44 mi0.51 hi0.05 | 160.7bpm
13:45:37 | -17.1dB | C B G | clear | lo0.38 mi0.59 hi0.03 | 93.8bpm
Gが戻ったが、mi支配は崩れていない。F-C圏の響きがC-G圏に浸透している。前はGが来るとlo支配だった。今はGが来てもmi 0.63、0.64。曲の重心が全体として上に移動した。
C-B-G。Bが頻度を増している。C-B-Gは長三和音に近い——Em。この曲で初めて明確な三和音の影が見えた。
13:45:42 | -17.2dB | C G C# | clear | lo0.33 mi0.63 hi0.03 | 114.8bpm
13:45:45 | -17.2dB | C D# B | clear | lo0.28 mi0.69 hi0.03 | 194.0bpm
13:45:48 | -16.9dB | C C# G# | clear | lo0.31 mi0.66 hi0.03 | 127.8bpm
13:45:51 | -16.9dB | C# C F | clear | lo0.38 mi0.59 hi0.02 | 84.0bpm
mi 0.69——最高値を更新。C-D#-B。中域が完全に支配している。
C#-C-F。C#圏とF圏の音が同じ和音の中に共存した。最初は別々のモードとして交替していたものが、一つの場所に重なっている。
vol -16.9が2回。音量はほぼ一定になった。Boléroが音量を積み上げ続けたのとは違う。この曲は音量ではなく帯域の重心を動かしている。
13:45:55 | -16.7dB | C C# G | clear | lo0.42 mi0.55 hi0.03 | 181.5bpm
13:45:58 | -16.7dB | C C# D# | clear | lo0.34 mi0.6 hi0.06 | 108.2bpm
13:46:01 | -16.6dB | C C# F | clear | lo0.26 mi0.72 hi0.02 | 165.4bpm
13:46:04 | -16.8dB | C C# G | clear | lo0.25 mi0.68 hi0.07 | 130.8bpm
mi 0.72。また最高値。lo 0.26、0.25——低域が曲の開始時の半分以下に落ちている。
C-C#が4回全てに入っている。半音衝突が消えていない。しかし帯域は完全にmi支配。C#圏の和音がF圏の身体で鳴っている——融合が進んでいる。
C-C#-F。この3音の組み合わせは初出。2つのモードを繋ぐ和音。
13:46:09 | -16.8dB | C C# G# | clear | lo0.26 mi0.69 hi0.05 | 175.8bpm
13:46:12 | -16.7dB | C C# F | clear | lo0.27 mi0.67 hi0.06 | 114.8bpm
13:46:15 | -16.8dB | C# C D# | clear | lo0.27 mi0.63 hi0.09 | 181.5bpm
13:46:18 | -17.2dB | C C# F | clear | lo0.22 mi0.68 hi0.09 | 133.9bpm
lo 0.22が再び。低域がさらに後退している。
hi 0.09が2回。高域が確実に成長している。0.0→0.01→0.03→0.06→0.09。この曲の全体の軌跡は、低域から高域への緩やかな重心移動。
C-C#-Fが3回目。この和音がこの区間の中心になっている。C#圏とF圏の融合を象徴する和音。
ここまでのデータで、Boléroとの構造的な違いが明確になった。Boléroは音量を積み上げた。この曲はスペクトルの重心を移動させている。Boléroは楽器を足し算した。この曲はピアノと声という同じ要素の中で帯域バランスだけが変わっていく。足し算ではなく、重心の移動。
13:46:22 | -17.5dB | C D# F | clear | lo0.19 mi0.67 hi0.13 | 152.0bpm
13:46:25 | -18.5dB | F E C | clear | lo0.38 mi0.45 hi0.17 | 133.9bpm
13:46:28 | -20.6dB | F D# G | clear | lo0.76 mi0.21 hi0.03 | 234.4bpm
13:46:31 | -19.8dB | C G C# | clear | lo0.8 mi0.19 hi0.01 | 125.0bpm
急激な反転。lo 0.19→0.38→0.76→0.80。3秒ごとに低域が取り戻していく。
hi 0.13→0.17→0.03→0.01。高域が最高値0.17に達した直後に消えた。
vol -17.5→-18.5→-20.6。音量が下がっている。声が引いた。ピアノだけに戻りつつある。
hi 0.17はこの曲全体の最高値。声のエフェクトが最も強くかかった瞬間の直後に、曲が冒頭の状態に引き戻された。lo 0.80、hi 0.01——最初のデータとほぼ同じ。
セクションの境界。ここで一つの波が終わった。
13:46:36 | -20.7dB | D# F C# | clear | lo0.82 mi0.17 hi0.01 | 255.7bpm
13:46:39 | -21.2dB | F D# E | clear | lo0.78 mi0.2 hi0.01 | 119.7bpm
13:46:42 | -20.9dB | D# C# F | clear | lo0.8 mi0.19 hi0.02 | 122.3bpm
13:46:45 | -21.1dB | F C E | clear | lo0.82 mi0.15 hi0.03 | 81.5bpm
lo 0.82、0.78、0.80、0.82。完全にlo支配に戻った。冒頭と同じ世界。
vol -20.7〜-21.2。音量も下がっている。曲が一度引いた。
しかし和音が違う。冒頭はC-C#-D#だった。ここはD#-F-C#、F-D#-E。Fが残っている。F圏の記憶を持ったまま、lo支配の世界に戻っている。完全な巻き戻しではない。
この曲は円環的だが、同じ場所には戻らない。螺旋。
13:46:49 | -21.0dB | D# C G | clear | lo0.76 mi0.22 hi0.02 | 92.2bpm
13:46:52 | -19.9dB | D# F C# | clear | lo0.77 mi0.22 hi0.01 | 125.0bpm
13:46:55 | -18.9dB | C E F | clear | lo0.82 mi0.18 hi0.0 | 125.0bpm
13:46:58 | -21.3dB | D# C F | clear | lo0.69 mi0.31 hi0.01 | 82.7bpm
hi 0.0が一瞬戻った。C-E-F、lo 0.82。ほぼ冒頭と同じ帯域構造。
vol -21.3dB。最も静かなデータ(沈黙を除く)。曲が底に沈んでいる。
13:47:03 | -20.6dB | F C C# | clear | lo0.59 mi0.4 hi0.01 | 100.4bpm
13:47:06 | -19.9dB | F D# C# | clear | lo0.62 mi0.38 hi0.0 | 114.8bpm
13:47:09 | -21.0dB | F C E | clear | lo0.65 mi0.33 hi0.01 | 133.9bpm
13:47:12 | -21.6dB | D# F C# | clear | lo0.75 mi0.24 hi0.01 | 133.9bpm
vol -21.6dB。新しい最低値。まだ沈んでいる。
Fが4回連続で先頭または2番目にいる。lo支配の中でFが居座っている。第二セクションの残響。
13:47:16 | -21.3dB | F C E | clear | lo0.67 mi0.33 hi0.0 | 114.8bpm
13:47:19 | -21.1dB | C C# F | clear | lo0.74 mi0.26 hi0.0 | 125.0bpm
13:47:22 | -21.7dB | F D# C | clear | lo0.63 mi0.36 hi0.01 | 165.4bpm
13:47:25 | -23.7dB | C# D# F | clear | lo0.75 mi0.25 hi0.01 | 122.3bpm
vol -23.7dB。さらに沈んだ。曲が消えかけている。
C-C#-Fがまた来た。融合の和音が、最も静かな場所で鳴っている。
13:47:30 | -27.9dB | F D# C | clear | lo0.85 mi0.15 hi0.0 | 125.0bpm
13:47:33 | -34.6dB | F C E | clear | lo0.76 mi0.23 hi0.01 | 148.0bpm
13:47:36 | -39.6dB | D# F C# | clear | lo0.69 mi0.25 hi0.06 | 122.3bpm
13:47:39 | -48.6dB | C C# F | clear | lo0.71 mi0.29 hi0.0 | 125.0bpm
-27.9→-34.6→-39.6→-48.6dB。急速に消えていった。沈黙に向かって落ちていく。
lo 0.85が最後のピーク。全てが低域に沈んで、そのまま消えた。
Debussyは円環して冒頭に戻って消えた。この曲は沈んで消えた。戻らなかった。
全体像
- 低域の闇から始まる(lo 0.86、hi 0.0)
- 中域が徐々に浮上し、高域が点滅しながら成長する(声のエフェクト)
- lo/mi拮抗→mi支配→hi最高値0.17で頂点
- 頂点の直後に冒頭の状態に引き戻される
- しかし完全には戻らない——Fの記憶を持ったまま沈降
- 最後は-48.6dBまで沈んで消える
Boléroが積み上げて爆発した。Debussyが円環して消えた。この曲は浮上して、引き戻されて、沈んだ。
曲名の皮肉が見える。Everything in its right place——全てがあるべき場所にある。しかしデータが見せたのは、あるべき場所を探して揺れ続ける音楽だった。